2017年09月05日

危機一髪・2

羽田空港で離陸滑走中の大韓航空機がエンジンから出火、緊急停止し乗客は全員緊急脱出しました。ひとつ間違えば大惨事にいたる危険をはらんでいました

・・・・・とお伝えしたのは2016,5月末のこと。火曜日午前に起きた日航 boeing777-346(ER) JA743J機※・緊急着陸は当初バードストライクと見られましたが左翼第一エンジン (General Electric社製 GE90-115B) 低圧排気圧縮タービン・ブレード破損と判りました。
エンジン燃焼室で膨張した高温の燃焼ガスを高圧タービンで減圧、回転動力に変換したあとの低圧になった排気ガスで回転させる大きなタービン羽根で吸入側から見てエンジンの最後方にあります。高温の燃焼ガスを受けてまわるので吸入側のタービンに比べて熱変化に耐える上に強度も求められます。パーツもタービンの中では大きい方で、飛散した部品は主翼にもダメージを与えました。

同じ場所で同じ時間帯に同型機が起こしたトラブル。偶然の一致でしょうか?(※=初飛行は06/10/2009)

以下にPW4000エンジンを使用している大韓航空機のケースを振り返ってみます。

事故が起きたのは午後0時40分頃,羽田C滑走路=HND34Rを南端側から加速し始めたHL7534:ボーイング777-3B5型機(300型、登録=1999/12)の左翼、第一エンジン後部で大きな爆発が起こり、黒煙と赤い炎が立ち上ります。コクピットにも火災を知らせる警告が鳴り響いたはずで、パイロットはすぐさま離陸を中止、半分以上の滑走距離を残していたことから、スピードは離陸速度を大きく下回るレベルであっただろうと思われます。幸運にも大惨事には至りませんでしたが、今回のエンジン火災は非常に危険なものと推察され、滑走路上に漏洩した燃料がこぼれ発火していたことから、もし、離陸速度に達していたらパリでのコンコルド墜落事故のような悲劇的な事故に繋がったかもしれません。96年福岡空港で起きたガルーダインドネシア航空機事故では離陸速度に到達後、離陸中止を強行したために滑走路を逸脱、3名の死者を出しています。そんな意味からも今回は不幸中の幸いだったといえるでしょう。では、第1エンジンに何が起こったのか?
ここから先は記録されていたお天気カメラの不鮮明な動画を基にした推察であることをお断りしておきます。離陸開始後、加速を始める時点でエンジンの回転数は程なくMAXPOWER、最高回転数に達します。エンジンの中でも燃料が噴射されるのは後半部分、前半分は取り込んだ空気をコンプレッサーで圧縮、高温に加熱する部分なので、火が出る場所はありません。炎が立ち上ったのは後半部分なので、高圧の空気に燃料を混ぜ、燃焼させる場所か、その後ろの排気タービンを回す部分のどちらかです。排気タービンは最大で毎分数万回転というスピードで回るので、タービン部品のわずかなひび割れやバランス不良でも大事故に繋がりかねません。回転を上げてから異常が起こったのであれば、まずこのタービンの異常が真っ先に疑われます。それ以上のことは今の段階では判りません。整備不良や部品の欠陥といった人的ミスが原因なのか、あるいは予測できなかった外部的な要因によるものなのか?日本はもちろん世界でも広く普及している大型機、それもエンジンが二基しかない双発機だけに一刻も早く原因を突き止めて欲しいものです。


・・・・・期せずして同じ滑走路で起きた同型機の事故。二度あることは・・・・三度目の正直にならぬよう原因究明を急いでほしいものです

| 19:49 | コメント(0) | カテゴリー:吉田雅彦

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