2016年03月24日

クールな熱演

 映画『エヴェレスト 神々の山嶺』はその登攀シーンの迫力に圧倒されっぱなしの映画でした.3Dメガネを使わずとも足のすくむような絶壁を俯瞰(上から見下ろすように)撮影するスタッフ、カメラマンの度胸/苦労がひしひしと伝わってきます。

21(写真はイメージです)


 エベレストの南西壁を単独無酸素で冬季に登攀する天才クライマーという(夢枕獏原作の)無茶を描いたこの映画で岡田准一、阿部寛とともにもう一方の主役を演じているのがフィルムカメラの名作キャノンF-1です。

 阿部寛、岡田准一に加えて紅一点、尾野真千子を加えた撮影隊は実際にエベレストのふもとの標高5000mを超えるベースキャンプで半月以上もお風呂には入れない中、撮影を行い、映画のリアリティを高めています。回想シーンでは谷川岳はじめスリリングな登攀シーンも登場し、実写ならではの迫力を味わうことができます。とりわけ光るのはラスト、阿部寛が演じる厳冬下でのクールな熱演。その氷のような表情は人間業とは思えないほどリアルな出来栄えでした。


 さて、山岳写真を撮るプロのカメラマンなら堅牢性や耐候性でニコンのFシリーズを選ぶのが普通ですが、岡田くん演じる深町カメラマンは800mmのレフレックス(望遠)レンズ一本で、阿部寛演じる一匹狼の天才クライマーをフィルムに収めようと奮闘します。負債を抱えながらも儲からない山岳写真にのめり込んでゆく個性的な役柄には個性的な小道具を、といったところでしょうか。時代は90年代、すでにキャノンEOSが世に出たあとですが、こうしてF-1(どちらかというとファッション、広告業界者に人気の機種でした)が脚光を浴びた映画はちょっと記憶にありません。それにしてもファインダーを覗く岡田くん 氷壁に挑む岡田くん目当ての女子も少なからず客席を埋めていたのが印象的でした

(3月12日より公開)

| 17:53 | カテゴリー:吉田雅彦


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