2015年07月20日

・・・to the MOON

 1969年7月、打ち上げ後20万マイルの道のりを月に向かって飛び続けるアポロ司令船、その窓から見える月の大きさは刻々と大きくなり、月の周回軌道に達しようとしていました。ここで何もしないとそのまま月をかすめて素通りしてしまいます。所定の場所に着いたら機械船のエンジンを6分間ブレーキ代わりに噴射して一気にスピードを落とします。膨大な量のチェックリストは既に確認済み。いよいよ月に降りる二名のパイロットたちが着陸船に移動します。

 船外活動用の宇宙服、記録用のカメラと滞在分の宇宙食、必要なものを月着陸船に搭載して、ただ一人司令船に残る、コリンズ飛行士は電気関係のプラグをはずし、慎重に二つの船体のハッチを閉めます。ここからはそれぞれが単独飛行、再びドッキングして地球に向かうまで月の表面から60マイル上空を回り続けます。もしも降下中の2人に何かが起きたら・・・・・たぶん裏プログラムも用意されてはいたはずですが、陽の目を観ずに終わっています。
 司令船の窓からは逆立ちしたような姿勢の月着陸船が月の上空を漂っているのが見えます。機体を保護する金色のアルミ蒸着シートが太陽光を受けてきらきらと輝くのが見えています。「サバイバル・シート」や「レスキュー・シート」の名でアウトドアショップでも購入できるあの薄いフィルムです・・・・

 いよいよ月着陸船は月面に向けて降下を始めます。何度か降下と減速の為エンジンを噴かせ、微調整を繰り返しながら月面を目指します。着陸船の2人は立ったままの姿勢。古い路面電車の運転士と同じ格好ですが無重力だから椅子は要りません。睡眠もこの姿勢のままです。
 降下を開始してまもなくイエローの警告サインが点灯しました。二ヶ月前のアポロ10号では分離、単独飛行までを本番どおりに遂行していますが着陸に向けての降下は今回が最初。引き返すことはままならず、このまま着陸用の燃料が切れないうちに安全に着陸する以外に生還の道はありません。
 警告サインに表示されたエラーコード1201&1202はコンピューターがオーバーフロー状態にあることを示します。この時代にはまだ液晶電卓も登場以前で、ごくごく初期のコンピューターが搭載されていましたが、今日のものと比べたら遥かに低容量・・・・・あっという間にクラッシュするような代物でした。
 着陸の操作とは直接関連しないものとわかったので警告は無視してそのまま降下、40・・・30・・・20・・・・月面からの高度(フィート表示)を読み上げる船長アームストロングの声がヒューストンの管制センターにも響き渡ります。月までの距離は電波でも一秒以上の道のり。実際には一秒前に読み上げられたメッセージが届いていたわけです。

  "こちら静かの海基地から・ヒューストン! アメリカ東部夏時間7月20日 4:18 p.m月着陸船"イーグル"が月面に着地して最初に船長が放ったメッセージでした。着陸用に残された減速用燃料はあと30秒分というきわどい、完璧な着陸だったのです。

| 14:28 | コメント(0) | カテゴリー:吉田雅彦

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