2009年07月14日

飛行機のしりもち

きのう、成田空港で仁川発の大韓航空
ボーイング777-300の機体後部が
滑走路に接触するトラブルがありました。

幸い乗客乗員にけがはなく、機体は
ターミナルまで自力移動しました。

旅客機の一部、特に長胴型の旅客機の
胴体後部には、テールスキッドと呼ばれる
接触防止装置が取り付けられています。

胴体が直接滑走路に接触するのを防ぐ為の
いわゆるつっかえ棒です。

胴体が長いと、どうしても機体を引き起こす際、
胴体後部が滑走路と接触しやすいので、
このような装置が取り付けられているのです。
(普段は胴体内に納められています)

きのうの大韓航空機の場合は、着陸時に
胴体を接触させていますが、テレビの
ニュース映像を見ると、いったん正常に着陸
した後、しばらく滑走して機首が再び浮き上がった
際に、胴体後部を接触させています。

当時は瞬間最大風速16メートル前後の強風が
吹いていたようです。

この時、かなりの煙が舞い上がっていますので、
かなり強く接触した可能性があります。
(滑走路には深さ1~2センチのキズがついていた
ようです)

通常、このようなトラブルは事故としては
取り扱われませんが、注意が必要なのは
テールスキッドを装備していない旅客機が
滑走路に接触した場合です。

ボーイング747ジャンボ機もそのひとつですが、
かつて、大阪空港でしりもち事故を起こした
ジャンボ機が、御巣鷹の尾根に墜落した事故は
今でも鮮明な記憶となって蘇ります。

接触事故がもとで圧力隔壁の修理が必要となり、
この時の修理が十分でなかった事から、後の
重大事故につながったと言われています。

今回の大韓航空機のケースも胴体後部を中心に
トラブルの影響を検査する必要があります。

テールスキッドが装着されているとはいえ、
十分な安全を保障するものではありません。

ジャンボ機と同様の事故を発生させないためにも、
十分な機体のチェックが望まれます。

テールスキッドは人間の尾骶骨のようなもので、
飛行機が登場し始めた頃は、殆どの飛行機が
胴体後部や垂直尾翼にテールスキッドを付けて
離着陸していました。

それがやがて車輪に代わり、現在ではほとんどの
飛行機が機首と胴体の中央部分に車輪を持つ、
3点着陸装置を備えています。

尾輪式旅客機の代表格はダグラスDC-3でした。
搭乗したことはありませんが、地上にいる時は
胴体が傾斜しているので、さぞや乗りにくかった
のではないかと思います。

でも、当時はそれがあたりまえだったのでそんな
不満もなかったのでしょう。

飛行機のしりもち、それは尾輪歩行から3点歩行へと
進化した飛行機の避けることの出来ない宿命なのかも
知れません。

| 13:00 | コメント(4) | カテゴリー:田中穂蓄

コメント

田中さん、お疲れさまです。
お話をお伺いしていますと、人類の進化の過程と同じように感じます。
今回、被害者の方が出なかったのが、本当に幸いでした・・・
航空機に対する造詣・思い入れも強い田中さんに申し上げるのが本当に憚られるのですが、このような事故を聴く度に、航空機に対する不安・不信の方が上回ってしまいます・・・
安心して利用させて頂く為にも、保守・点検・整備に全力を尽くして頂きたいと感じます。

投稿者 ちなみん : 2009年7月14日 14:34

DC-3・・・007の最新作に登場しますね。
飛べる機体がよく残っているものですね。

投稿者 koto1200 : 2009年7月15日 09:24

ちなみんさん、ありがとうございます。
飛行機を安全に運航させるための努力は、今も昔も変わりありませんが、省力化によってパイロットの負担が減った分、カンが鈍るようなことがあってはならないと思います。
前にもお話したことがあると思いますが、操縦技術の重要な要素は風を感じることが出来るかどうかだと思います。

投稿者 ホヅミ : 2009年7月19日 08:13

koto1200さん、ありがとうございます。
「007/慰めの報酬」では、DC-3とSF260との壮絶な空中戦が見せ場となっています。
機銃掃射を受けて穴だらけになったDC-3ののカッコいいこと、DC-3をこんな大迫力で映像化した作品は
そうありません。
私としてはサボイアSF260の映像も気に入っています。

投稿者 ホヅミ : 2009年7月19日 08:29

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