2006年12月29日

長~い長~いつぶやき・最終回

思い返せばいろんなことがありました。しかし、今こうして生きていることに感謝です。無事だったことにも感謝です。そして、晴れていたこと、気温が16℃まで上がり暖かかったことにも・・・。なんといっても、仲間がいてくれたこと。助けに来てくださった方々にも・・・。ありがとう。

長いつぶやきにお付き合いくださった皆様にも感謝です。

私は待った。待って待って待ち続けた。あと少しの辛抱だが、ゴールが見えると急にぐったりしてきちゃう。あと1時間くらいでレッカーが到着する。そのうちに担当者から連絡があるとのことだ。だからといって、今か今かと待ち続けるのも心臓にあまりよろしくない。するってぇと・・・、寝るしかないわけだ。電話を握り締めて壁際に座り、背中を丸め、風を避けるように小さくなって寝た。やはり、少し安心したんだろう。すんなり夢の中へと入り込めた。

ほのぼのとしたふんわりした夢をみていた。何の不自由もない安らかな時をさまよっていた。あぁ、気持ちいい・・・。ずっとこの世界を見ていたい、そんな気持ちになっていた。夢を見ていることを夢の中で感じていた。
「!」
どのくらい経ったのか分からないが、電話の音が私の目を覚ました。
「来たっ!」

「もしもし~!」
「レッカーの者ですが。」
「お世話になりますぅ!」
「今、首都高に乗って向かっているんですけど、目印ってあります?」
「○○や△△、××の看板があります。その反対側には○○や△△・・・。」
「今、渋滞しているので通り過ぎることはないと思うんですけど、また近くまで行ったら電話しますね。」
「はい、ありがとうございます。」

そして、ツーリング仲間にも伝言を残す。
「もうすぐ、レッカー来てくれるみたいです。今、向かってくれてます。またね~。」

いよいよ本当にあと少し。すでに、私を助けてくれるだろう人は同じ首都高速に乗っている。まだ見えるはずはないが、レッカーが向かってくる方向に顔を向けちょっと背伸びして探してみる。
「アラッ、あたし、必要以上に今ニヤケてたわ・・・。」
自然に頬もゆるんでくる。太陽の光がさっきよりも優しく降り注ぐ。確かに通り過ぎる車はノロノロ運転だから、レッカーは確実に私に気づいてくれるであろう。でも、なにかのタイミングで流れが良くなったら、通り過ぎられちゃうこともアリだ。
「ン~~~~~ン・・・。」
しかしだ。物欲しそうに往く車を眺めていると、心優しい方を止めてしまうことだってありうるかもしれない。で、私は言う。

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「すみません。もう、レッカー呼んでるんで・・・。止まって下さって有難うございます。すみませ~ん。アハッ!」
・・・いやいや、そんな迷惑はかけられないでしょ。っつうか、なんて勝手な想像だ。いかん、いかん。それよりも、車の通り過ぎるそばに立ってて、またしても「危ないぜぃっ!」と、クラクション鳴らされることもあるかもしれない。さすがにそれはもう嫌だ。とても惨めな気持ちになるもの。相手にもそんな感情を抱かせるのもダメだわ。人様の手をこれ以上わずらわせてなるものか。きちんと目印を告げれば、大丈夫。でも、レッカーがこの避難スペースに入ってきた途端にあたしが轢かれちゃったら・・・。いやいや、そんなことがあるわけないでしょ。なんて想像してるんだ。・・・あぁ、訳の分からない妄想で頭がうめつくされていく。やっぱり暇ってよくないわね。つまらないこと考えて悶々としちゃうわ。
「!」
っと、良いタイミングで電話だわ。
「もしもし~、レッカーの者ですが。」
「はぁい!」
「おそらくもう少しだと思うんですが、○○や△△の看板でしたっけ?ほかには・・・。」
「××も見えます!」
「あっ、ありました、ありました。あっ、分かりました!」
私は少しだけ身を乗り出すように向かってくる車を見つめていた。それに気づいてくださったらしい。レッカーらしき車が私とバイクを追い越し、少し先から避難スペースに進入。そして、停止。
「あぁ~~~、ようやく到着だぁ!」
やはり、とても嬉しかった。体の力がフワッと抜けるような安堵感を覚えた。

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「有難うございます。よろしくお願いしますっ!」
「分かりやすい所で良かったですよ。渋滞もしてるんで焦らずにすみました。」
「いや、本当に有難うございますっ!」
私は我がバイクをレッカーのオニイサンに預けた。前進後進は全く問題がないから、我が子はオニイサンの手に引かれて素直について行った。狭い荷台に乗せられる時も抵抗をしなかった。ウィ~ンッ、ガタンッと普段聞かない音がしても怖がらなかった。少しずつ視界が変わり、いつもより高い位置につれていかれても微動だにしなかった。堂々とした子である。我が子ながらアッパレだ。しかし、少しずつロープにつながれる様は目をそむけたくなってしまった。
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「ごめんよぉ。グルグル巻きにされちゃって・・・。」
でも、我がバイクは凛として、目の前の車たちを何食わぬ顔で眺めていた。私は涙が出そうになった。しかし、私が泣いていては頑張っているこの子に申し訳が立たない。歯を食いしばって、心を鬼にして、この状況を記憶に焼き付けた。そして、一段落したときに、私はあることを思い出した。そう、パトロール隊に出会った時のことだ。彼らは退散するときに私に一言注文をつけていた。『緊急電話を使って、この場を去ることを告げよ』というものだった。

「えっ、あの電話が使えるの? まだ一度も使ったことがない。まぁ、使う理由なかったし、使わないほうがいいんだろうし。えっ、どうやって使うんだろう・・・。」
そんな私の気持ちを察したのか、パトロール隊の1人が、
「取っ手を上に持ち上げたら話せるから。」
と教えてくれた。

ようやくその時は来た。これまた胸が高鳴る。
「あの黄色い箱の中はどうなっているんだろう?」
私はこの瞬間をカメラに収めたいという欲求にかられていた。しかし、しかし。もし、テレビ電話のようになっていたら、非常時にカメラを構えるとは何事だとお叱りを受けるかもしれない。もし、相手に早口で喋られたら写真を撮る時間がなくなるかもしれない。あれやこれやと考えては見るが、あの取っ手を開けてみないことには何も始まらない。決めた。開けよう。左手で開けよう。右手にはカメラだ。私は構えた。そして、開けた。

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「ツーツーツーッ・・・・・・・・。プルルルルル~ッ・・・・。はいっ、どうしました?」
「(出たぁっ!)あっ、あのぉ・・・、(時間を稼がねば!)・・・え~っ、先ほど、ここにですねぇ・・・(と、その瞬間にパチリ。そして、チェック。あっ、斜めだ。)・・・えっと、バイクで止まってた者なんですけどぉ・・・(もう一枚、おっ、いい感じ。)そろそろ移動しますぅ~!」
「はい、分かりました。・・・ツーツーツーッ・・・・・・・。」

切れた。終わってしまった。どうしよう。まだ左手は開けたカバーをそのまま掴んでいる。細部まで撮るべきか。だが、このまま開け続けていると不審に思われてまた電話がつながる可能性がある。まっ、いいかっ。閉めよう。・・・閉めた。

「あぁぁぁぁぁ。閉めてしまった。」
一抹の淋しさを感じた。これでもう二度と開けることができない。むやみに開けるとつながってしまう。二度と戻れぬあの数秒。
「惜しいな。もっと図々しければバシャバシャ写真撮っただろうなぁ、もっともっと細部を観察しただろうなぁ。」

不思議ななかなかできない体験であった。まっ、何度も言うが、使わないに越したことはないんだから、これで良かったのだ。
「よしっ、帰ろう。」
その前に・・・
「もしも~し。今、バイクをレッカー車に乗せましたぁ。これから、首都高、降りま~す。また後で連絡しま~す。みんなも気をつけてね~。」

私は荷物をまとめ、レッカー車に乗り込み、後ろで揺れる我が愛しのバイクを見つめながら首都高速をあとにした。ただいまの時刻12時20分。


こうして、5時間の首都高速滞在ツアーが終了した。長い長いつぶやきも一段落。もし、一言コメントを求められたら・・・、
「あぁ疲れた・・・。」
っていうだろうなぁ。読んで下さった皆様もお疲れになりましたぁ? それなら、書き続けた甲斐があったというものです! お付き合いくださいまして、本当に有難うございましたぁ!

では、年末年始のすべての方の安全を祈りませう~~~!

| 16:26 | コメント(0) | カテゴリー:木次真紀

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